組み込み(産業)用SDカード / microSDカードの選び方を解説!
投稿日:2022/2/3
更新日:2022/2/3

SDカードやmicroSDカードは、フラッシュメモリ型の手軽なメモリーカードとして広く一般に普及しています。
しかし、産業機器に使用される組み込み用カードは、一般向け製品とは異なる性能が求められます。この記事では、産業用SDカード/microSDカードの選び方をご紹介します。
SDカード / microSDカードの種類
はじめに、SDカードやmicroSDカードの種類についておさらいしておきましょう。
SDカードは、正式には「SDメモリーカード」と言われるストレージ(記録メディア)の規格のひとつです。SanDisk(現・Western Digital)、東芝(現・キオクシア)、松下電器産業(現・パナソニック)の3社で共同開発され、2000年に64MBのSDカードが誕生してから急速に普及が進んできました。
SDカード / microSDカードの標準規格は、SDアソシエーション (SD Association)という関連団体によって策定されており、SDカード / microSDカードの外形や物理仕様はどのメーカーの製品も共通です。まずは、一般向け製品にも産業用製品にも共通するSDカード / microSDカードの基本的な規格と種別を確認しておきましょう。
SDカードとmicroSDカードの違い(形状による種別)
SDカードには大きさの違いによって、標準サイズ(一般的にSDカードと呼ばれるもの)、miniSDカード、microSDカードの3つの規格があります。しかし、microSDカードの登場によりminiSDカードはほとんど使われなくなってきているため、ここでは標準サイズ(SDカード)とmicroSDカードの違いを紹介します。
SDカード(標準サイズ)
縦32mm、横24mm、厚さ2.1mmのメモリーカードです。デジタルカメラをはじめ、さまざまな機器に使用されています。
microSDカード
標準サイズのSDカードの1/4ほどの大きさに小型化されたメモリーカードです。縦15mm、横11mm、厚さ1.0mmで、スマートフォンやゲーム機など小型デバイスに多く使用されています。
記憶できる容量による違い
SDカード / microSDカードは、記憶できるデータ容量による種別もあります。
SD、SDHC、SDXC、SDUCと、新たな規格が誕生するごとに容量は増加しており、超容量(英語でUltra Capacity)を意味する最新の「SDUC」では最大128 TBに対応しています。
なお、各規格は下位互換性があり、例えばSDXCメモリーカード対応機器であればSD / SDHCメモリーカードを扱うことができるのが一般的です(詳細は各製品の仕様を確認してください)。
~2GBまで | 2GB超~32GBまで | 32GB超~2TBまで | 2TB超~128 TBまで | |
SDカード | SD ※SDSCと呼ばれる場合もある |
SDHC ※HCはHigh Capacityの意味 |
SDXC ※XCはExtended Capacityの意味 |
SDUC ※UCはUltra Capacityの意味 |
micro SDカード |
microSD | micro SDHC |
micro SDXC |
micro SDUC |
このように、SDカード / microSDカードの基本的な種類は、外形サイズ(フォームファクタ)と記録容量や使用する機器との互換性に関わる規格をチェックすることが第一ステップです。
さらに詳細には、データ転送や書き込みの速度などもチェックし、組み込む機器が求める性能に応じたものを選ぶ必要があります。次の項目では、これらのスペック標示も含めたSDカード / microSDカードのラベルの見方をご紹介します。
SDカード / microSDカードのラベルの見方
SDカード / microSDカードの表面には、ラベルが貼られているか、印字されています。ラベルや印字には、メモリーカードの種類や容量、データ転送や書き込みの性能などを表す記号が書かれています。SDカード / microSDカードのラベルの見方は次の通りです 。
(1)容量別SD規格とデータ容量
前項でご紹介した容量ごとのSD規格の種類を表すロゴと、保存できるデータ容量が記されています。
(2)スピードクラス(データ書き込み速度の最低保証値)
常にデータを書き込む必要がある動画撮影機器に使用する場合には、データ書き込み速度の速いSDカードを使うことでフレーム落ちのない確実な録画ができます。また、映像の高画質化が進むなか、データ容量の大きい4K・8Kなどの大容量データに対応する書き込み速度も求められています。
このように、特に動画の記録に使用する場合には、使用する機器に応じたデータ書き込み能力を持つSDカード / microSDカードを選択することが必要です。
このデータ書き込み能力についてもSDアソシエーションによる規格が定められており、これを「スピードクラス」と言います。スピードクラスの表記は3種あり、以下でその種別を紹介します。
スピードクラス
スピードクラスには、Class2, Class4, Class6, Class10があり、Cのなかに「2、4、6、10」の文字が入った記号で表されています。
データ書き込みの最低保証速度を表す記号で、それぞれの数字は2MB/秒、4MB/秒、6MB/秒、10MB/秒を表しています。Class10製品は、ハイスピードバスに対応した機器が必要です。
UHSスピードクラス
UHSスピードクラスには、U1, U3があり、Uのなかに「1,3」の文字が入った記号で、UHSバスインターフェイス製品向けの速度規格を表しています。
数字はデータ書き込みの最低保証速度を表し、「UHSスピードクラス1」は10MB/秒、「UHSスピードクラス3」は30MB/秒です。ビデオスピードクラス
ビデオスピードクラスには、V6, V10, V30, V60, V90があり、Vの字に「6、10、30、60、90」の数字を組み合わせた記号で表されます。上記2規格と同様に、データ書き込みの最低保証速度を表す記号で、4K・8Kなどの高画質映像の記録に対応するため策定された規格です。
それぞれの数字は、6MB/秒、10MB/秒、30MB/秒、60MB/秒、90MB/秒を表しています。
V6とV10はハイスピードおよびUHSバスインターフェイス、V30はUHSバスインターフェイス、V60とV90はUHS-IIおよびUHS-IIIバスインターフェイスに対応した機器が必要です。
(3)データ転送速度の最大値(UHS バスインターフェイス規格)
例えば、カメラで連写撮影を行う場合には、データ転送速度の速いSDカードを使うことで安定したパフォーマンスが得られます。
SDカード / microSDカードでは、メモリーカードと機器間のデータ書き込み速度を表す規格が「ノーマルスピード」「ハイスピード」「UHS-I」「UHS-II」「UHS-III」の5つの種別に分けられています。
このうち、新しく追加された「UHS(Ultra High Speedの略)」は、大容量データ転送に対応するための規格で、ラベルではローマ数字の「I、II、III」などの記号で表されています。理論値で、UHS-Iは最大104MB/秒、UHS-IIは最大312MB/秒、UHS-IIIは最大624MB/秒に対応しています。
(4)データ転送速度の最大値(SD Express)
SD Expressは2018年に策定されたデータ書き込み速度を表す新たな規格で、ラベルではEXPRESS(省略表記でEX)と書かれています。
最大3940MB/秒のデータ転送速度を実現します。
(5)アプリケーションパフォーマンスクラス(スマホアプリ向けの規格)
スマートフォン等のアプリ活用を快適にするため、ランダム読込・書込とシーケンシャルの最低処理速度を定めた規格です。
「A1、A2」の2種の規格があり、それぞれ下記表のように最低処理速度が定められています。
アプリケーション パフォーマンスクラス |
ランダム読み込み 最低処理速度 |
ランダム書き込み 最低処理速度 |
シーケンシャル 最低処理速度 |
クラス1 (A1) | 1500 IOPS | 500 IOPS | 10 MB/sec |
クラス2 (A2) | 4000 IOPS | 2000 IOPS | 10 MB/sec |
組み込み(産業)用SDカードを特徴で選ぶ
ここまでは一般向けSDカード / microSDカードにも共通する、基本的な規格をご紹介してきました。
さらに、産業機器に使用するSDカード / microSDカードを選ぶ際には、使用環境や使用条件に応じて、下記のようなポイントを考慮して選ぶことが重要です。
1. 耐久性
業務用機器は、一般消費者向けの家電製品と比較してライフサイクルが長く、過酷な使用条件下でも安定して稼働することが求められます。そのため、メモリーカード本体の耐久性能が高い製品を選ぶ必要があります。
産業用SDカードには、一般向け製品より高温・低温環境下で使用できる(詳細は下記)、電源遮断耐性、データ保持の信頼性、長期供給性、防水・防塵性能を持つ、などの特徴があります。
また、データの書き換えに対する耐久性も重要です。フラッシュメモリは「NANDフラッシュメモリ」と呼ばれる記憶装置によって書き換えを行っています。NANDフラッシュメモリには、「TLC」「MLC」「SLC」という3つの種類があり、一般的に書き換え回数の保証値はTLC で1,000回、 MLCで3,000回、SLCで5万回と言われています。SLCは産業用のSDカードのみに採用されています。
2. 温度使用条件
産業用途で求められる使用温度条件に対応するため、産業用のSDカード / microSDカードは対応温度範囲が広く設定されています。
幅広い温度環境に対応する産業用の部品を使用することで動作温度、保存温度とも、一般消費者向け製品と比べて広く対応していることが特徴です。一例として、対応温度範囲が「-25℃~85℃」や「-40℃~85℃」の製品があります。
3. 電源遮断耐性
突然の電源遮断に対してリカバリーできる性能を持つことも産業用SDカードの特徴です。メモリを管理するファームウェアの高度な働きにより、保存済みのデータを保護することが可能です。
4. データ保持の信頼性
電源遮断耐性のほかにも、産業用SDカードにはデータ保存・書き換えのエラーを低減し、データ保持の信頼性を高める特徴が備わっています。
例えば、ビットエラーのリフレッシュ機能は、累積するビットエラーを検出、訂正し、書き換えを行うことができます。また、ウェアレベリング(書換え平準化)は、メモリセルの特定のブロックに書き換えが集中して行われることでのダメージを軽減する機能です。
すべてのブロックに均等にデータが書き込まれるようにすることで、製品の寿命を伸ばしています。
5. 製品供給体制
SDカードは取り外し可能な記録メディアであり、産業用機械に組み込む場合には交換周期も考慮しなければなりません。
また、SDカードの主要部品であるフラッシュメモリは新たな仕様の開発が日々進んでおり、新製品への置き換えが高頻度に行われる可能性があります。
そのためSDカードのメーカー側で、長期的な供給が保証されているかも要チェックポイントです。
6. BOM(部品)固定
一般消費者向けSDカードでは、同じ品番の製品でもフラッシュメモリやチップが知らないうちに変わってしまう場合もあります。内部の部品の変更は性能のバラつきを引き起こし、使用する機器との相性にも影響を与える可能性があります。
産業用のSDカードは、使用する部品を将来に渡って変更しない「BOM(部品)固定」が提示されているものが多く、長期に渡って安定した使用を実現します。
組み込み(産業)用SDカードを用途で選ぶ
次に、産業用のSDカードを組み込む機器に着目し、どのようなSDカードを選べばよいのか考えてみましょう。
用途ごとに求められる機能・性能を考慮し、産業用SDカード選びに役立ててください。
1. ドライブレコーダー・カーナビ
ドライブレコーダーやカーナビは、真夏・真冬など過酷な車内温度の変化にさらされるため、動作温度の範囲が広いSDカードまたはmicroSDカードが適しています。
また、とくにドライブレコーダーは、車が動いている間、映像を記録し続けなければならないため、書込みデータが壊れにくい、信頼性の高い製品を選ぶことが重要です。カードの寿命をモニター可能な製品もあります。システムの要求に合せて、書き換えに対する耐久性(TBW)、録画時間、使用期間を考慮してカード容量をお選び下さい。
高容量のカード程、書き換えの耐久性が増え、長時間録画、交換頻度を減らす事が可能となります。使用する機器やビデオフォーマットに応じたスピードクラス規格(データ書き込み速度)の製品を選ぶことも必要です。
2. ドローン
機器の小型化のため、microSDカードが適用されることが一般的です。
基本的に屋外で使用する機器のため、さまざまな使用環境に耐えられるよう、動作温度の範囲が広い製品を選ぶと良いでしょう。データ保持の信頼性の高い製品を選ぶのはもちろん、映像を記録する用途に使用する場合には、ドライブレコーダ用途と同様に書込みデータが壊れにくい、信頼性の高い製品を選ぶことが重要です。
使用する機器やビデオフォーマットに応じたスピードクラス規格(データ書き込み速度)の製品を選ぶことも必要です。
3. ゲートウェイ
端末とインターネットを介した遠隔操作・管理の仕組みを作り上げあるIoTゲートウェイ機器は、工場や屋外の防犯システムなど、温度変化の激しい環境で使用される場合があります。
そのため、どのような環境下でも安定的に稼働できる動作温度の範囲が広いSDカードまたはmicroSDカードを組み込むことが必要です。
4. AI対応デバイス
リアルタイムでデータの収集を行い、学習して結果に活かすというAIの性質上、大容量のSDカードまたはmicroSDカードが適している場合があります。アプリケーションに応じて最適な容量をお選び下さい。
5. エッジコンピューティング製品
エッジコンピューティング製品は、クラウドにデータを送らず、エッジ側でデータのクレンジングや処理・分析を行います。
過酷な環境や広範囲での温度環境で使用されるため、強い耐久性の製品を選ぶのがおすすめです。システムからの要求と使用環境に応じて、最適な容量とスピードクラス規格、動作温度範囲のカードをお選びください。
おすすめのメーカー3選
組み込み(産業)用SDカード購入の流れ
このように、産業機器のSDカード選びには機器の特性や使用環境に応じたさまざまな選択のポイントがあります。そのため、産業用SDカードを購入する際には産業用製品を取り扱う専門のメーカーや代理店に相談することがおすすめです。
下記は、一般的な問い合わせから発注までの流れです。
- お問い合わせ
- 機器や使用条件などの用途確認
- 最適なSSDのご提案(評価サンプル、お見積り等含む)
- サンプルご評価(導入検討)
- 評価完了
- 発注
当社では、組み込みSSDの導入検討から購入までを技術サポート含め一貫して提供しています。在庫や価格情報などを詳しく知りたい場合は、下記よりぜひお問い合わせください。
佐鳥SPテクノロジ株式会社のご紹介
佐鳥SPテクノロジ株式会社は、ストレージ製品の開発・設計・保守・コンサルティングを手掛けるストレージ専門メーカー / 代理店です。
産業用SDカードの導入の際には豊富な知識・ノウハウをもとに、最適な製品選びのアドバイスが可能。試験環境や通信解析の体制も充実しており、機器との相性の確認や、システム評価のサポートが受けられることが特長です。
まとめ
これまでご紹介してきたように、産業用SDカード / microSDカードには関連団体に定められた共通規格のほかに、産業用途ならではの機能や特徴があります。
また、使用条件によって変化するSDカード / microSDカードの寿命や組み込む機器のライフサイクルに応じて、交換周期も計画しなければなりません。
組み込む機器に最適な製品を選択するためにも、産業用SDカード / microSDカードを選ぶ際には産業用ストレージ製品を専門的に取り扱うメーカーや代理店に相談するようにしましょう。