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HDD大容量化の技術-シングル磁気記録方式(SMR)・ヘリウム充填化とは

投稿日:2021/11/30

更新日:2021/11/30

SSDとの違いや、HDDの導入や交換を検討している方は必見です。ぜひ最後まで読んで頂き、自社に適したHDDの参考にして下さい。

HDDとは

ハードディスクドライブ(hard disk drive、HDD)とは、磁性体を塗布した円盤を高速回転 させ、磁気ヘッドで磁化や磁力の読み取りを行うことで、情報を記録し読み出す記憶装置の一種です。SSDと比べ、大容量でも低価格なことが特徴です。

HDDは以下の部品等で構成される記憶装置です。

・磁気ディスク、磁気ヘッド、プリント基板、HDDコントローラー、キャッシュメモリー等、現在、流通している製品サイズは、3.5インチ、2.5インチ(磁気ディスクの直径)。
HDDは、磁気ディスクと磁気ヘッドが動く事で、物理的にデータの書き換えなどを行います。書き換え回数の上限がないのがメリットです。ただし、磁気ディスクと磁気ヘッドの隙間が数nmしかないため物理的な衝撃に弱く、磁気ヘッドに異常が発生した場合や、磁気ディスクに傷が付いた場合に、データの読み書きが出来なくなる可能性があるので取り扱いに注意が必要です。
採用されているインターフェイスは、SATA(Serial ATA)、SAS (Serial Attached SCSI)が主流となっています。

HDDの主な用途・分野

HDDは、Data Center、Server、Storage System、PC、FAPC、Surveillance System、Video Recorder、Game Console、Car Navigations、MFP、POS、カラオケ等のデータストレージとして広く使用されています。
容量あたりの単価が安く、大容量のデータ保存に向いています。低容量帯においては、SSDへの置換が進む傾向もありますが、大容量、低コスト、既存のシステムを長期に使用する場合のストレージにおいては今後も使用されていく見込です。
大容量化への取組について説明します。

大容量化の歴史

世界で初めての商用HDDは1956年にIBMから出たディスク記憶装置「RAMAC」と言われており画像十数枚分の容量でした。直径24インチ(約61cm)のディスクを50枚格納した巨大な装置で、当時の価格で5万ドルでした。
HDDは1980年代前半に実用化がされてきて、10GB前後の容量が登場してきます。
また、価格も数万円ほどに抑えられてきており、まさに、一般消費者にも広まってきた時代です。
その後、1990年代になるとインターネットの普及により、動画や音楽も利用されはじめ、同時にデータ容量が飛躍的に増量されてきました。
現代では、一台のデスクトップPCに数TBの容量が搭載されていることも見慣れてきています。
約40年で数千倍の容量に成長したHDDの進化には、どのような技術革新があったのでしょうか。
それら技術をいくつかご紹介します。

SMR(シングル磁気記録方式)

SMR (Shingled Magnetic Recording) とは、高記録密度化のための磁気記録方式 (瓦磁気記録方式とも呼ばれる)です。

HDDの記録密度を高める方法として、ディスクの径方向のトラック幅(磁気ヘッドの幅)を狭くする方法があります。しかし、これは磁気ヘッドからの磁界の強度が不十分になることと、最小の記録単位の「磁区」の面積が小さくなり、熱揺らぎという現象により常温でもデータを保持できなくなる問題が顕在化します。シングル記録方式では、従来の幅広の磁気ヘッドを用いながら、トラックを記録する際に、これらが重なり合う (オーバーラップ) するようにディスク面に対して垂直方向にデータを記録する方法で、あたかも"瓦" (Shingle) を重ね合わせるように見えることから、瓦磁気記録方式と呼ばれます。この方式は、シーケンシャルな書込みに特化しており、ランダム書込み時にはスループットが遅くなるデメリットがあります。

一方で、従来の記録方式は、CMR (Conventional Magnetic Recording)と呼ばれます。この方式はSMRとは異なり、トラック同士が干渉しないよう、間にガードバンドといわれる隙間を設けています。

ヘリウム充填

HDDの容量を増加させる為に搭載するディスクの枚数を増やす事で実現できますが、より枚数を増やす為にHDD内部をヘリウムで充填する方法があります。HDDは、毎分数千回転以上で高速にディスクが回転する為、空気の気流抵抗によって起こる振動を抑える為には、ディスクはある程度の厚さが必要になります。ヘリウムは、空気と比較すると7倍軽い為に気流抵抗を抑える事ができて、薄いディスクの搭載によりディスク枚数を増加させることができました。

ヘリウム充填HDD(Helium HDD、ヘリウムHDD)では、従来の呼吸孔がある一般的なHDDと比べ、約50%の高容量化、消費電力の削減、発生音(ノイズ)の低減化等を実現しています。

他の技術

SMRやヘリウム充填化以外にも大容量化を実現させる技術は多くあります。 いくつかご紹介します。

HAMR(熱アシスト磁気記録方式)

熱揺らぎが起きないように保磁力を高め、磁区を小さくした磁気ディスクには記録しづらくなります。そのため、レーザー熱を用いて記録媒体を加熱し、記録媒体の保磁力を低下させ、記録容易性を高める方法です。 磁性体は加熱されると、弱い磁束密度でも磁化するという特性があるため、書き込み時に一時的に加熱することで、書き込みを容易化することができます。

MAMR(共鳴型マイクロ波アシスト磁気記録)

MAMRはHAMRとは異なり、レーザーではなくマイクロ波を使う方法です。
スピントルク発振器からマイクロ波を照射し、HAMRと同様に保磁力を一時的に弱めて記録します。

HDDのおすすめメーカー

ウエスタンデジタルは、ハードディスクドライブとフラッシュメモリ製品を提供するアメリカのメーカーです。HDDを自社で生産し、世界2位のシェアを誇っています。
各アプリケーション向けに幅広く商品を展開しています。
2013年に、ウエスタンデジタルは、世界初の商用ヘリウム充填HDDを出荷開始しており、最新の製品ではヘリウム充填HDDのCMR HDDとしてUltrastar DC HC570で22TBを実現しています。

まとめ

HDDの大容量化は歴史をたどると急速な発展を遂げていますが、記録ヘッドのサイズなどの限界が見えてきている状態でもあります。
しかしながら、HAMRやMAMRなどの新技術も出てきており、今後も大容量化の発展が見込めます。