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注目が集まるeMMC / UFSとは?他のストレージ製品との違いも解説

投稿日:2022/4/8

更新日:2022/4/8

SDカードの選び方

産業用ストレージといえばSSDやSDカードなどが代表的なアイテムですが、最近は「eMMC」や「UFS」が組み込まれる製品も増えています。

モバイルノートパソコンやスマートフォンなどで活用されることが多かったeMMCやUFSは、今や車載用アプリケーションやエンタープライズ市場などでも用途が広がっているのです。

この記事では、eMMCやUFSの特徴や産業用組み込みの使用例を中心に、他のストレージ製品との違いやおすすめメーカーなども解説します。

eMMCとは?


eMMCとは、NANDフラッシュメモリーと制御回路から構成される内蔵ストレージ規格のことです。eMMCは、embedded MultiMediaCard(エンベデッド・マルチメディアカード)の略で、組み込み機器向けのマルチメディアカードと訳されます。

名前の通り、通信仕様はMMCに準じており、同じ規格でつくられたSDカード(SDメモリーカード)と互換性があります。ちなみに、MMCはデジタルカメラなどで1990年代後半に普及した規格ですが、その後に登場したSDカードにシェアを奪われ、現在ではeMMC規格のみが存続しています。

eMMCのサイズは、大きいものでも3c㎡程度です。コンパクトで省電力、発熱量が低いことがeMMCの特徴で、以前からモバイルノートパソコンやスマートフォンなどで活用されていましたが、産業用eMMCとしてドライブレコーダなどの車載用カメラをはじめ、ドローン、IoTゲートウェイなど活用の場は広がっています。

産業用eMMCの主な用途・分野

●車載用

・ドライブレコーダー
・先進運転支援システム
・クラスター/ダッシュボード
・車載インフォテインメント
・マルチメディアシステム
…etc.

●産業用

・IoTゲートウェイ
・産業用/組み込み用PC
・工場・ビルディングオートメーション
・POSシステム
・監視システム
・デジタルサイネージ
…etc.

UFSとは?


UFSとは、eMMCと同じくNANDフラッシュメモリーをベースにコントローラーを搭載した内蔵ストレージ規格のことです。Universal Flash Storage(ユニバーサル フラッシュ ストレージ)を略してUFSとよびます。UFSは、ノキアやソニー・エリクソンなどにより設立された団体で規格を策定し、半導体技術協会のJEDECが標準化しました。

見た目の形状やサイズはeMMCと似ていますが、eMMCに準じない規格のため互換性はなく、SDカードとも互換性はありません。ただ、転送方式が異なり同スペックのSDカードよりも消費電力が低いことが特徴です。消費電力はeMMCとほぼ同じですが、UFSはより高速なNANDフラッシュメモリーの規格であることから、eMMCの後継として注目を集めています。

もともと、デジタルカメラやスマートフォンでの利用を目的に規格されたものですが、民生用電子機器にも活用の幅が広がっており、市場規模は今後大きく拡大すると期待されています。

産業用UFSの主な用途・分野

・バーチャルリアリティ
・AI
・4Kビデオ、高解像度カメラ

…etc.

eMMCとUFSの違いについて

UFSは、フラッシュメモリストレージにおけるデータ転送速度と信頼性を高めることが、規格開発の根底にあるといわれます。そのためUFSは、従来のストレージ規格であるeMMCと比べてパフォーマンスが大幅に向上しています。

例えば、転送速度をWestern Digitalの産業用ストレージで比べると、eMMCが最大300MB/秒(eMMC5.1 HS400の場合)、UFSが最大800MB/秒(UFS 2.1 Gear3 2Laneの場合)で、UFSのほうが約2.5倍のパフォーマンスを発揮します。

この差を生み出す要素のひとつが、インターフェースの違いです。eMMCはパラレル・インタフェースを採用しているのに対し、UFSは高速のシリアル・インタフェースを採用しています。パラレル・インタフェースのeMMCは、読み取りまたは書き込みのどちらか一方のみを実行する仕様であるのに対して、シリアル・インタフェースのUFSは、読み取りと書き込みを同時に実行できる仕様になっています。このため、UFSのほうが転送速度は高速なのです。

また、UFSにはマルチプルコマンドキュー機能が採用されています。この機能は、簡単にいうと、フラッシュメモリーのどこに書き込むかという命令を蓄えたり、次の読み取り個所をあらかじめ伝えたりすることが可能な技術です。従来のeMMCでは、一つの書き込みが完了するまで次の読み取り命令を受けることができず、転送速度の低下につながっていました。UFSには、マルチプルコマンドキュー機能という新たな技術を付加することにより、転送速度の向上を実現しているのです

こうした機能を向上させる一方で、UFSには待機時に一部回路への電源をカットするといったモードを備えています。このモード設定により、大きな電力を必要とするデータ伝送時でもeMMCと変わらない省電力化を実現していることも、UFSの特徴です。

eMMCとUFSの特徴

eMMCとUFSの特徴を、容量、速度、寿命や耐久性の点で紹介します。

容量

容量は、eMMCが8GB〜256GB、UFSが16GB〜256GBという製品が、産業用では主流となっています。スマートフォンなどに搭載されるのは、容量32GBや64GB程度のものが一般的ですが、近年はこれよりも大きな容量を搭載したハイエンドスマートフォン向けの製品も増えています。

速度

eMMCは、バージョンアップするごとに最大転送速度が向上しています。現在主流のeMMC 5.1の場合、転送速度は最大400MB/秒です。HDDと比べれば早いもののSSDよりも遅く、SSDとHDDの中間の速度といえます。

一方、UFSもバージョンアップするごとに最大転送速度が向上しており、2022年現在の主流となっているUFS 3.1の場合、約2,300MB/秒(2GB/秒)以上を実現します。この速度なら、SSDと比較しても見劣りしないレベルでしょう。

寿命・耐久性

寿命の点では、HDDのように磁気ヘッドや円盤などの物理的な故障要因がないため、一般的な使用頻度であれば故障を気にすることはありません。ただし、eMMCもUFSもNANDフラッシュメモリーですから、書き換えの上限が存在します。

耐久性の点では、多様な製品に組み込むうえで動作できる温度範囲も重要なポイントになります。メーカーにもよりますが、Western Digitalの製品の場合、動作温度範囲は-40℃~85℃までと、幅広い温度環境での動作が確認されています。

eMMC / UFSとSSDとの比較

eMMCやUFSと同じく、NANDフラッシュメモリーのストレージとしてSSDがあります。

サイズで比べるとSSDは、パソコンなどに使われるスタンダードな規格だと2.5インチ、MicroSATAだと1.8インチが主流です。これに対してeMMCやUFSはコンパクトで、大きいものでも3c㎡程度。SSDよりも一回り小さいことから利便性に優れ、タブレットやスマートフォンに適したサイズであることもeMMC / UFSの特徴です。

また、価格で比べるとコンパクトなeMMCやUFSのほうが安いです。ただし、ストレージ容量が少ないことも価格が安い理由ですから、1GBあたりの価格で比べるとeMMCやUFSのほうが割高になります。

消費電力はSSDと比べてかなり低く、eMMCやUFSは省電力性にも強みがあるストレージです。発熱量も小さいので、大きなバッテリーやファンなどを搭載できない製品に適したストレージでもあります。

eMMC / UFSを購入するときにおすすめメーカーは?

産業用の組み込みに使用するeMMCやUFSを購入するなら、「Western Digital」か「Hikstorage」などのメーカーがおすすめです。

Western Digital

Western Digitalは、ハードディスクドライブとフラッシュメモリー製品に強みを持つ米国のストレージメーカーです。

車載市場、産業市場、エンタープライズ市場から民生市場向けまで、幅広い製品ポートフォリオをラインナップしており、監視、ドローン、IoTゲートウェイ、輸送、産業用PC、組み込みPC、オートメーション、ネットワーキングなどの広範なアプリケーションのニーズに対応します。

eMMCやUFSなどNAND フラッシュメモリーにおける専門知識が豊富で、多様な組み込み用途の条件に耐えられるシステム設計も評判の高いメーカーでもあります。

Hikstorage

中国の監視カメラメーカー HIKVISION社の子会社で、2017年に設立されたストレージメーカーです。長時間の録画にも対応するストレージ製品を数多くラインアップしており、コストパフォーマンスの良さとニーズにあわせた製品提案ができることを強みとしています。

産業用途からコンシューマーまで幅広い製品ラインナップで、多様なニーズに対応します。

まとめ

eMMCやUFSを選定する際には、用途や目的、そしてコストを含め多様な観点から製品を選ぶことが重要です。

佐鳥SPテクノロジ株式会社は、eMMCやUFSをはじめ多様なストレージ製品の開発から設計・保守・コンサルティングを手掛けるストレージ専門メーカー / 代理店です。豊富な知識・ノウハウをもとに、最適な製品選びのアドバイスができることはもちろん、試験環境や通信解析の体制も充実しており、機器との相性の確認や、システム評価のサポートもご提供します。

eMMCやUFSのことなら、佐鳥SPテクノロジ株式会社までご相談ください。